テルアビブ乱射、日本謝罪の舞台裏 アラブ反発に苦慮

http://www.asahi.com/politics/update/1221/TKY200812210173.html


日本政府特使としてイスラエルを訪れ、メイア首相(左)と握手する福永健司衆院議員=72年6月4日、エルサレム首相官邸

 72年5月30日、日本人3人が100人近くを殺傷したイスラエル・テルアビブ空港乱射事件。日本政府が発生直後、イスラエルに特使を派遣・謝罪し、犠牲者に見舞金を払ったことに、中東各国では賛否が分かれた。22日付で公開された外交文書からは「日本的対応」への反発に戸惑う日本の外交官の姿が浮かび上がる。

 事件は、岡本公三容疑者(61)=国際手配中=ら日本赤軍メンバー3人が、テルアビブのロッド空港(現ベングリオン空港)で自動小銃を乱射するなどしたもの。死者は犯人2人を除き24人。日本赤軍が海外で次々と起こしたテロのはしりとなった。

 発生直後の5月31日、在サンフランシスコ総領事が「大至急」扱いで出した公電は「日本の誠意を至急示して悪い反応が起こることを防止することが必要」と訴えた。翌6月1日には「日本のイメージが著しく損なわれる」との懸念も在ホノルル総領事から出た

 日本政府は遺憾の意を表明イスラエルの首相と旧知の福永健司衆院議員(当時)を特使として派遣。福永氏は4日、メイア首相と面会し、弔慰金、見舞金を贈ることを申し出た。総額は150万ドル(当時約4億6千万円)に上った

 この対応はイスラエルで好意的に受け止められたが、中東紛争で敵対関係にあったアラブ諸国には波紋や反発が広がった

 駐シリア大使が8日に出した公電はシリア側の見方をこう伝えた。「日本独自の事情で行動されることは危険。イスラエルの(アラブ侵略という)非人道的行いに由来する弱みは、日本の陳謝で目下に消え去る」

 駐エジプト大使は10日、エジプト政府上層部の意見として「日本人3人の行為にこれ程(ほど)まで日本政府がアポロジイ(謝罪)する必要があるのか。政府は何等(なんら)責任のないこと。対日経済ボイコットが議題とされつつある」と伝え、「総理または大臣のアラブ向け声明の発出方至急御考慮を」と要望した。

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 同大使は翌11日エジプト高官を訪問。「日本側の措置が純然たる人道的見地より出たものをるる説明、誤解に基づく措置が取られることなきよう強く要請」と報告している。

 その後沈静化したが、外務省中近東課がこの時期にまとめた文書にはこう記されている。「(アラブ諸国は)未(いま)だ内心は釈然としないものを有しているやであり、背景の複雑さ、極めて感情的な問題となっている」松村北斗

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 〈東京大学池内恵准教授(イスラム政治思想)の話〉日本政府が欧米の反応を気にしていた様子がうかがえる。先進国の仲間入りを果たそうとする時期にイメージの悪化を避けようと、最大限の対応をしたのだろう。一方、アラブ諸国は、日本赤軍がテロを実行したため、自らは手を下さずに大義は海外から支持されたことになり、歓迎した。日本政府の謝罪はその大義を否定されたように映った。とはいえ、公然とは日本を批判しづらい。アラブ諸国政府はパレスチナ勢力と敵対している場合があり、公電からは各国のパレスチナ勢力に対する立場の違いによって、日本への不満の表明も度合いが異なっていることがうかがえる。

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 〈日本赤軍重信房子被告(63)=殺人未遂罪などで上告中=が中心となって71年、革命拠点をつくる「国際根拠地論」構想の一環としてレバノンで結成された。当初パレスチナの過激派組織などと共闘関係を展開した。

 テルアビブ事件後も各地でテロを引き起こした。74年、オランダ・ハーグの仏大使館を占拠、75年、クアラルンプールの米国大使館を武装占拠。さらに77年にパリ発東京行き日航機をハイジャックしたダッカ事件と続いた。

 90年代後半からメンバーの逮捕が相次ぎ、重信被告も00年、大阪府内で逮捕された。

 他のメンバー7人は現在も国際手配されている。テルアビブ事件の岡本公三容疑者はイスラエル当局に逮捕され、終身刑を言い渡されたが、服役中に捕虜交換で釈放。後にレバノンへの政治亡命が認められた。

比較的良好と言われている日本とアラブの関係ですが、こんな苦労もあったんですね。

世界テロリズムマップ (平凡社新書)

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を読みましたがテロ=犯罪という意識だけで読んでました。まあでも過去の話は過去の話としてハマスイスラエル間の停戦も放棄され、親イスラエルといわれるオバマ次期米大統領が、どう出てくるのか微妙なところですね。