遺棄化学兵器処理 「ハルバ嶺」凍結 政府方針 事業費を大幅削減

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090123-00000092-san-pol


(写真:産経新聞

 旧日本軍が中国に遺棄したとされる遺棄化学兵器の処理事業をめぐり、政府は、砲弾の大部分が埋まっている吉林(きつりん)省・ハルバ嶺(れい)でのプラント建設事業を今後3年間凍結し、事業規模を大幅に縮小する方針を固めた。複数の政府筋が22日までに明らかにした。ハルバ嶺の事業凍結に伴い、中国各地に散在する小規模発掘事業での砲弾回収・無害化作業を先行実施する。これにより事業費は10分の1ほどに縮小される可能性もあり、実態が不透明だとの批判が出ていた処理事業は大きな転換点を迎えた。

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 内閣府遺棄化学兵器処理担当室などによると、ハルバ嶺は、旧関東軍の司令部が付近にあったとされ、丘陵地帯に化学兵器の砲弾など30万〜40万発が縦穴2カ所にまとめて埋まっているとみられている

 処理事業は平成11年度から始まり、19年度までに約540億円が投入されている。日中両国政府は16年4月、穴全体を施設で覆い、機械で発掘する発掘回収施設と、砲弾を無害化処理するプラントなどを建設する計画で合意。施設建設費だけで2000億円以上の出費が見込まれていた。

 ところが、中国側の調整が進まず事業が膠着(こうちゃく)状態となる中、19年秋には日本政府が事業を全面委託していた遺棄化学兵器処理機構をめぐる巨額詐欺事件が発覚。同時期に日本政府が、発掘回収装置の仕様書に関し、複数の日本企業に意見を聞いたところ「情報が足りず設計できない」と追加調査を求められたという。

 与党内などから今後、日本側の負担がどこまで膨らむのか分からないという批判が出たことを受けて、政府は20年3月で処理機構との契約を打ち切るとともに事業計画を再検討。「ハルバ嶺の巨大施設建設には合理性がない」と判断し、当面の事業凍結と事業規模の縮小方針を決めた。

 担当室では今年1月から3カ年の予定で再調査の試掘を開始。調査の結果、機械での回収に適さないと判断した場合、手掘りによる回収に切り替えれば、少なくとも発掘回収施設の建設費940億円が不要になると見込んでいる。

 一方、中国各地の小規模発掘事業では、建設現場など40カ所以上で出土した砲弾約4万6000発を回収し、約20カ所に貯蔵している。安倍晋三首相(当時)は19年4月、中国の温家宝首相との首脳会談でこれらの砲弾の無害化処理に「移動式処理設備」を導入することで合意した。

 この移動式処理設備が効率的に運用できることが分かれば、ハルバ嶺での処理プラントも不要になる可能性もあるため、小規模事業を先行させた方が事業効率がはるかに高いという。

 担当室は22日、移動式処理設備を入札し、神戸製鋼が30億円で落札した。移動式設備はトレーラー数台に機材を分乗し各地を巡回しながら処理作業を行う予定で、22年に南京での初稼働を目指す。費用は4年間の運用費込みで106億円を計上している。

 政府はこれらの事業方針転換で信頼回復を図りたい考えだが、これまでの事業費との整合性を問われる可能性もある。ハルバ嶺事業凍結により、化学兵器禁止条約で定める24年4月の期限までに処理が終わらないのはほぼ確実で、この点も批判が上がる恐れがある。

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これについては下のような報道がありました。

やばいぞ日本】第2部 資源ウオーズ(7)「工作の成果」1兆円
http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070825/ssk070825000.htm

 中国にある旧日本軍の化学弾の処理をめぐり、日本政府が今年度予算を含め、投入する国費は累計約683億円に上る。さらに今後建設される発掘回収施設費は940億円。無害化処理施設の建設費は1000億円を超えるとみられる。

 現地での人件費や施設維持費などがかさみ、「日本の持ち出しは総額1兆円規模になる」と専門家は分析する。

 この遺棄したとされる化学兵器の処理問題ほど、重要な条件が不明なまま、中国の言い分を受け入れた例は類をみないと指摘されている。

 ある外務省OBは「中国にとって旧日本軍の化学兵器処理は戦後最大の対日政治工作の成果だ」と語る。

 1997年に発効した化学兵器禁止条約によれば、遺棄化学兵器とは「1925年以降、いずれかの国が、他の国の領域内に当該他の国の同意を得ないで遺棄した化学兵器」と明記されている。

 敗戦によって満州を含む中国大陸の旧日本軍は降伏し、すべての兵器、施設、財産は旧ソ連と中国に没収、接収され、所有権は両国に移転した。

 また、いったん包括的に没収したあと、中国に旧日本軍の化学弾を残したのはソ連である。

 ここから導き出されるのは二つの疑問である。

 一つは、武装解除や占領による没収は、当該国の同意を得たことにならないのかもう一つはソ連に条約上の処理義務は生じないのか

 こうした旧日本軍化学弾の所有権はどこにあるか、という問題こそ、日本政府は詰めなければならないはずだ。

 ところが、外務省は所有権が日中いずれにあるのかを精査した形跡はない。ロシア政府に対しても情報や資料の提供を求めていない

 95年9月、この条約に批准した当時の村山富市首相は「遺棄した方の国にその処理の責任がある。誠実に実行するのは当然だ」と国会で答弁した。河野洋平外相は「外国が遺したものを含めて日本が責任をもって処理する」とまで言い切った河野氏らは引き渡したことを証明した書類がないとして、中国に有利な化学兵器処理策を推進したのである。

 日中両国は99年7月、日本側が遺棄処理費の全額を負担することなどを盛り込んだ覚書を交わした。将来の事故まで日本が補償することとされた。初めから日本に責任ありきという結論があったがゆえに政府は所有権問題に背を向けてきたといわざるを得ない。

 だが、化学弾を引き渡したという証言が、外務省による遺棄化学兵器に関する旧日本軍兵士16人への聞き取り調査で明らかになった。

 2004年3月に受け取った報告書には「終戦時は黒龍江省牡丹江市付近に駐屯し、鏡泊湖付近の平地で(ソ連軍の)武装解除に応じ、他の鉄砲や弾薬とともに数千発の化学弾を引き渡した」という元軍曹、二本柳茂氏の証言が盛り込まれていたからだ。

 ただ外務省はこの報告書を公表していない。「ソ連軍と引き渡しの文書を交わしたという証言ではないからだ」(中国課)と説明する。

 遺棄化学兵器の処理は、国の名誉にかかわる問題だ。外務省が事実関係を明らかにしなければ、国益は損なわれていくだけだ。理経費の一部が、中国軍の近代化に寄与する可能性もある。 対中迎合外交のつけを日本国民は子々孫々までたっぷり払わされることになるのだろうか。(高木桂一)

「日本製を夜間にころがした」

 8月14日、8人の陸上自衛官が中国吉林省ハルバ嶺近くの敦化(とんか)に飛んだ。自衛官たちは9月18日まで、埋められている旧日本軍の化学兵器の発掘、回収作業に汗を流す。

 一方で旧日本軍の化学弾が発掘された同じ場所から他国の砲弾がみつかっている。2004年9月に陸上自衛官黒龍江省寧安(ねいあん)市内で行った発掘、回収作業では化学兵器、通常砲弾、地雷、小銃弾など2000発が混在して発見されたが、旧日本軍のものは89発にすぎなかった

 中国に派遣されたことがある自衛官は「発掘した通常弾、化学弾の中には(弾には必ず巻かれている)銅帯が抜き取られた弾がいくつもあった」と振り返る。中国軍が日本から没収した化学弾から、カネになる銅だけを奪って地中に埋めたに違いないと、軍事専門家は解説する。

 処理作業に携わった政府関係者は「朝、発掘、回収予定地に着いたら、昨夜はなかった日本製の化学弾ひとつが現場にころがしてあった。どこかに保管されてあったものだ」とも語る。

 これらは、化学兵器禁止条約が問題にする「同意を得ずに遺棄された化学兵器」に当たらないことを示していよう。

 昨年春、山形県にある全国抑留者補償協議会(全抑協)のシベリア史料館に、中国で旧日本軍が武装解除の際に引き渡した武器・弾薬の詳細を記した「兵器引継書」約600冊が残っていることが明らかになった。

 90年代に故斎藤六郎・元全抑協会長がロシア各地の公文書館などから合法的に持ち帰ったものだ。引継書に記された兵器移交目録の「受者」には、「陸軍少将 李盛宗」「軍政部特派員 楊仲平」などと国民党軍の責任者の身分、署名、捺印(なついん)があった

 これを受けて昨年5月12日の衆院内閣委員会で戸井田徹議員(自民党)が政府の対応をただした。安倍晋三官房長官(当時)は「この資料は精査すべき内容だ。政府としてもしかるべき調査をする」と答弁した。

 その直後、戸井田氏の議員会館の事務所に外務省の中国課長が飛び込んで、こう言い放った。

 「(引継書が)600冊出てきたところで全容は分かりませんよ」。

 戸井田氏は「あなたはどこの国の役人だ」といさめたという。

 外務省は結局、昨年10月、シベリア史料館の600冊の引継書の約3分の1を写真撮影し、民間の専門家に判読を委託することになった。

 また、今になって、中国の言い分がいかに科学的根拠を欠いているかがわかってきた

 旧日本軍が遺棄したとされる化学兵器の総数について、中国が主張していたのは「200万発」。当初の日本政府説明は「70万発」。それが埋設地の吉林省ハルバ嶺で行った日本側による磁気調査の結果、30万−40万発にとどまることが後で判明した。

 日本がこれまで発掘、回収した旧日本軍の化学兵器は約3万8000発。推定埋蔵数の1割にすぎない。条約で義務付けられた処理期限は2012年4月までだ。それまでに処理作業が完了することは難しい。

 旧日本軍の化学弾の所有権を不明にしたまま、合意を急いだことが大きな禍根を残している。

この辺の問題は早くクリアにして欲しいです。